コラム

公開 2020.07.22 更新 2024.02.26

「もめない」不動産の遺産分割方法を弁護士が解説

相続_アイキャッチ_27

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。

1.不動産の遺産分割はトラブルが発生しやすい

誰でも遺産相続トラブルは避けたいものです。しかし遺産の中に「不動産」が含まれていると、相続トラブルが発生しやすい傾向があります。理由は以下の通りです。

1-1.不動産は平等に分けにくい

不動産は現金や預金のように1円単位で平等に分割するのが難しい資産です。基本的には誰か1人が引き継ぐことになりますが、そうなると他の相続人は遺産を受け取れず不満を抱くでしょう。特に遺産が「実家の不動産のみ」のケースではトラブル発生率が高くなりがちです。

1-2.不動産の処分方法はいくつかある

不動産の分け方や処分方法は1つではありません。たとえば相続人のうち1人が不動産を取得して他の相続人に代償金を払う方法もありますし、売って売却金を相続人間で分ける方法もあります。ある相続人は「不動産を残したい」、他の相続人は「売ってお金で分けたい」などと主張して意見が割れると解決が難しくなってしまいます。

1-3.不動産は評価方法もさまざま

不動産には「定価」がなく評価方法がさまざまです。それぞれの相続人が異なる評価額を主張すると、どの基準で評価すべきか決められずトラブルにつながります。

「遺産なんて田舎の実家の土地建物しかない」というケースでも相続トラブルが起こるので、油断してはなりません。

2.不動産の3種類の遺産分割方法

不動産には以下の3種類の遺産分割方法があります。

  • 現物分割
    不動産をそのまま分ける方法です。1人が全部取得するか、土地の場合であれば分筆してそれぞれ相続人が分筆後の土地を相続します。
  • 代償分割
    相続人の1人(又は複数人)が不動産を取得し、他の相続人へ「代償金」を支払う遺産分割方法です。
  • 換価分割
    不動産を売却して代金を相続人間で分配する方法です。

以下でそれぞれの特徴や向いているケースをみていきましょう。

3.現物分割

メリット

現物分割のメリットは、手続きが簡単でわかりやすい点です。誰か1人が相続するだけならその人の名義に相続登記すれば手続きは完了します。

デメリット

現物分割には「公平に分けにくい」デメリットがあります。1人が相続すると他の相続人は何も受け取れなくなる可能性があります。土地を分筆すれば公平に分けられるケースもありますが、分筆できない土地や分筆によって価値が下がる土地もありますし、建物は分筆できません。

現物分割が向いているケース

  • 誰か1人に不動産を集中させたい
  • 分筆可能な広い土地がある
  • 取得する相続人以外は不動産に関心がない
  • 相続の対象となる不動産が実家で亡くなった親が長男などの特定の相続人と同居しており、その相続人が実家に居住し続ける場合(この場合、相続税の負担を抑えることができる場合もあります。(小規模宅地の特例の利用等))

4.代償分割

メリット

代償分割のメリットは、比較的公平に遺産分割できることです。不動産自身は誰か1人が相続しますが、他の相続人に対し「代償金」が払われるので不公平になりません。

デメリット

デメリットの1つめは、不動産を取得する相続人に「支払能力」が必要となる点です。代償金を支払わねばならないので、資金がないと代償分割できません。
また代償金を計算するときに「不動産の評価」が問題になります。代償金を支払う相続人は評価額を低めに見積もり、代償金を受け取る相続人は評価額を高めに見積もって意見があわず、もめてしまう可能性があります。

代償分割が向いているケース

  • 不動産を取得したい相続人に充分な支払能力がある
  • 遺産を公平に分けたい
  • 不動産を売らずに手元に残したい
  • 相続の対象となる不動産が実家で亡くなった親が長男などの特定の相続人と同居しており、その相続人が実家に居住し続ける場合(この場合、相続税の負担を抑えることができる場合もあります。(小規模宅地の特例の利用等))

5.換価分割

メリット

換価分割のメリットは、完全に公平に遺産分割できる点です。売却した代金を法定相続分に従って分配するので、不動産の評価方法による影響も受けません。
売った代金で相続税を支払うことも可能です。

デメリット

デメリットは「不動産」という資産が失われることです。親や先祖から受け継いだ土地建物を失ってしまうのはしのびない方もおられるでしょう。

また不動産を売ると、仲介手数料や測量費用などの経費がかかり、思ったより手元に残る金額が少なくなる可能性があります。

さらに不動産を売却する時期やタイミングの問題もあります。遺産分割のために急いで売却すると安値でしか売れず、損をしてしまうケースがあります。

換価分割が向いているケース

  • 誰も不動産を引き継ぎたくない
  • 資産として不動産を手元に残したいという希望がない
  • 公平に遺産分割したい
  • 誰にも代償金を支払う資力がない
  • 相続税の納税資金が足りない

6.不動産の遺産分割トラブルを避ける方法

不動産の遺産分割トラブルを避けるには、以下のような方策が有効です。

6-1.遺言を遺しておく

元の所有者が生きているうちに、不動産の遺産分割の方法について指定した遺言書を作成しておきましょう。たとえば遺言書で「不動産は長男に相続させる」と指定しておけば、相続人たちが遺産分割協議をしなくても不動産が自動的に長男のものになります。
ただし子どもなどの相続人には最低限の遺産取得分としての「遺留分」があります。遺留分を侵害すると、侵害された相続人が侵害した相続人に遺留分侵害額の金銭請求を行う等、トラブルになってしまうおそれがあるので、遺留分にも配慮した内容の遺言書を作成しましょう。
たとえば遺留分のある相続人へ遺留分額に相当する遺産を遺せばトラブルになりません。

6-2.互いに譲り合う

遺言書がなければ相続人達が遺産分割協議で不動産を分け合わねばなりません。このとき、あまり自分の主張を押し通しすぎないようにしましょう。お互いに相手の立場で考えて譲り合えば、トラブルになる可能性は大きく低下します。
不動産の取り合いや分け方でもめている時間や労力がもったいないので「トラブルに巻き込まれるくらいなら譲った方が得」という合理的な考えをする方もおられます。

6-3.法律知識は必須

損をせずトラブルも起こさずに不動産を分けるには、正しい法律知識が必須です。

  • 誰にどの程度の法定相続分が認められるのか
  • 不動産の分け方や評価方法にはどのようなものがあるのか
  • 遺産分割協議が成立しない場合にどのような手続きになるのか

こういった知識があれば、常に適切な選択ができて無用なトラブルに巻き込まれるリスクが大きく低下します。
弁護士までご相談ください。

6-4.共有は避ける

不動産相続の際「とりあえず相続人間で共有」する方法もあります。しかし共有にすると、将来「共有物分割」をしなければならないので「問題の先延ばし」にしかなりません。
また共有不動産は活用も困難なことが多いです。共有者全員の合意がないと改変や売却ができないため、放置されてしまうケースも多々あります。

多少面倒でもきちんと遺産分割協議を行い上記の3種類のいずれかの方法で不動産を分けましょう。

まとめ

不動産の遺産分割の場面ではトラブルが発生しやすいので対策が重要です。
できれば生前に遺言書を作成し、遺言書がなかったら相続人らが正確な知識をもって譲り合いながら話し合いましょう。
困ったときにはお気軽に弁護士までご相談ください。

Authense法律事務所が選ばれる理由

Authense法律事務所には、遺産相続について豊富な経験と実績を有する弁護士が数多く在籍しております。
これまでに蓄積した専門的知見を活用しながら、交渉のプロである弁護士が、ご相談者様の代理人として相手との交渉を進めます。
また、遺言書作成をはじめとする生前対策についても、ご自身の財産を遺すうえでどのような点に注意すればよいのか、様々な視点から検討したうえでアドバイスさせていただきます。

遺産に関する問題を弁護士にご依頼いただくことには、さまざまなメリットがあります。
相続に関する知識がないまま遺産分割の話し合いに臨むと、納得のできない結果を招いてしまう可能性がありますが、弁護士に依頼することで自身の権利を正当に主張できれば、公平な遺産分割に繋がります。
亡くなった被相続人の財産を調査したり、戸籍をたどって全ての相続人を調査するには大変な手間がかかりますが、煩雑な手続きを弁護士に任せることで、負担を大きく軽減できます。
また、自身の財産を誰にどのように遺したいかが決まっているのであれば、適切な内容の遺言書を作成しておくなどにより、将来の相続トラブルを予防できる可能性が高まります。

私たちは、複雑な遺産相続の問題をご相談者様にわかりやすくご説明し、ベストな解決を目指すパートナーとして供に歩んでまいります。
どうぞお気軽にご相談ください。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
早稲田大学法学部卒業、早稲田大学大学院法務研究科修了。数多くの建物明渡請求訴訟や不動産法務に取り組む。その他、相続(遺産分割・遺留分等)、離婚問題も得意とする。不動産関連の企業顧問の経験も活かし、不動産が絡む相続案件も取り扱っている。
<メディア関係者の方>取材等に関するお問合せはこちら

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。

こんな記事も読まれています

コンテンツ

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。