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遺産分割協議が相続税申告期限前に終わらない場合の対処は?知っておくべきデメリット

遺産分割協議が相続税申告期限前に終わらない場合の対処は?知っておくべきデメリット

相続が起こり相続人(遺産を相続する人)が2人以上いる場合、遺産の分け方を話し合う「遺産分割協議」を行います。遺産分割協議そのものに期限はありませんが、相続税の申告期限前に終わっていないと、不利益を被ることがあるため注意が必要です。

そこで今回は、遺産分割協議が相続税の申告期限前に終わらない場合のデメリットや対処法について解説します。相続税の軽減制度や納税猶予制度が使えなくなって後悔しないためにも、遺産分割協議と相続税の申告期限の関係を確認しておきましょう。

遺産分割協議とは?

遺産を相続する人が1人であれば、その人が遺産をすべて相続します。

しかし、相続人が複数いるケースで被相続人(=遺産を残して亡くなった人)が遺言を残していない場合は、誰がどの遺産をどれだけ相続するのか、話し合って決めなければなりません。この話し合いが「遺産分割協議」です。

遺産に含まれる財産の種類や金額、相続人の数はケースごとにさまざまで、遺産分割協議が問題なく進むこともあれば難航することもあります。

たとえば、現金や預金のように分割しやすい財産が多ければ遺産分割協議がスムーズに進む可能性が高くなり、不動産のようにそれ自体分割することが難しい財産が遺産に含まれるケースでは、誰が相続するのか揉めることも少なくありません。

そして、最終的に遺産の分割方法について合意できたときには、「遺産分割協議書」という形で協議結果を書面として残します。遺産分割協議書を作成する法的な義務はありませんが、預金口座の解約や不動産登記の手続きなどで必要になるため、遺産分割協議書を作成することが一般的です。

遺産分割協議に期限はない

遺産分割協議をいつまでに終えなければならないという期限はありません。そのため、たとえば相続開始後5年や10年経過してから遺産分割協議を始めたとしても、参加すべき相続人がすべて参加して行われていれば、その遺産分割協議自体は有効です。

ただし、遺産分割協議が完了しない状態が長く続くと、遺産を相続できないためにご遺族の生活に影響が出ることが考えられます。また、遺産分割協議が終わらないうちに次の相続が起こると相続人・利害関係者の数が増えることもあり、協議がさらに難航することにもなりかねません。

遺産分割協議が終了せずに、特定の期限を超えることで法令違反や罰則の対象になる心配はありませんが、遺産分割協議は早めに始めて早めに終えるようにしましょう。

相続税の申告期限には注意が必要

遺産分割協議自体に期限はないものの、相続税の申告期限には注意が必要です。相続税の特例制度の中には、申告時に遺産分割協議が完了していないと使えないものがあります。

相続税の特例制度が使えるかどうかで、税額が数百万円~数千万円変わることも珍しくありません。相続税の申告期限である「相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月後」までに遺産分割協議が終わるかどうかは、相続人にとって影響の大きい重要なポイントです。

また、この後お伝えする方法を使えば相続税の申告期限後に適用できる特例制度もありますが、そういった場合でも当初の相続税の申告時には特例が適用できません。後々に払い戻しを受けられるとしても、高額な納税資金をいったん準備しなければならないことがあります。

そのため、次に紹介する特例制度を使う場合には、相続税の申告期限を意識して遺産分割協議を進めることが大切です。

ただ、どうしても遺産分割協議に時間がかかってしまうケースは実際にあるため、その場合は早めに弁護士に相談したほうが良いでしょう。相続に強い弁護士が間に入ることで話し合いが進んだり問題を解決したりすることができ、相続税の申告期限に間に合うことがあります。

遺産分割協議が相続税申告期限前に終わらない場合のデメリット

相続税が軽減される制度や納税が猶予される制度など、相続税にはさまざまな特例制度が用意されています。「遺産を相続する人」や「相続する遺産の種類」に応じた配慮が必要と考えられるケースでは、他のケースとまったく同じように相続税を課税すべきではないからです。

ただ、裏を返せば特例制度を使えることはあくまで「遺産を相続する人」とその人が「相続する遺産の種類」が決まっている場合です。遺産分割協議が終わらず、どの遺産を誰が相続するのか決まっていなければ、特例制度は適用できません。

そして、遺産分割協議が終わっていないことで適用できない特例制度について、主な制度を紹介します。

  • ・ 配偶者の税額軽減の特例
  • ・ 小規模宅地等の特例
  • ・ 農地等の納税猶予の特例
  • ・ 非上場株式等の納税猶予の特例
  • ・ 物納

「配偶者の税額軽減の特例」が適用できない

「配偶者の税額軽減の特例」とは、配偶者が相続する場合、「1億6千万円」と「配偶者の法定相続分相当額」のうち、いずれか高い金額まで相続した遺産に相続税がかからない制度です。

配偶者は、故人の遺産の形成に貢献した存在として遺産を受け継ぐ権利が当然あり、相続税が大きく軽減される仕組みになっています。少なくとも1億6千万円の遺産までは相続税が非課税になるため、税負担の軽減効果が非常に大きい制度です。

ただ、この特例の対象になるのは、遺産分割などで配偶者が実際に取得した財産です。相続税の申告期限前に分割されていない遺産はこの特例の対象にならず、税額軽減の恩恵を受けられません。

なお、この後紹介する対処法を使えば、相続税の申告期限後でも「配偶者の税額軽減の特例」を適用できます。ただし、このときに注意しなければならないことは、当初の相続税の申告では特例が適用されない点です。

そのため、遺産分割が完了した段階で税額計算をやり直し、払い過ぎている相続税があれば払い戻しを受けられますが、当初の相続税の申告時には納税資金をいったん準備しなければならないことがあります。納税資金の準備など、必要な対策は早め早めに行うようにしましょう。

「小規模宅地等の特例」が適用できない

「小規模宅地等の特例」とは、被相続人が居住用や事業用として使っていた土地を相続する場合、相続税の計算において土地の評価額を50%または80%減額できる制度です。

特例を適用できる要件は細かく決まっていますが、その土地で暮らしたり事業を行ったりして収入を得る遺族の生活を考慮して相続税が軽減される仕組みになっています。

ただし、この特例は要件に該当する一定の相続人が土地を相続する場合に使える制度です。遺産分割協議が終わっておらず誰が土地を相続するのか決まっていなければ、この「小規模宅地等の特例」は適用できません。

なお、この後紹介する対処法によって相続税の申告期限後でも適用される点は、前述の「配偶者の税額軽減の特例」と同じです。

「農地等の納税猶予の特例」が適用できない

「農地等の納税猶予の特例」とは、農業を営んでいた人が亡くなり相続人が農地を相続して農業を行う場合などに、相続税の納税が一部猶予される制度です。国の食糧事情に影響を与える農業や農地は保護すべき対象であり、農地の細分化防止や農業後継者の育成のため、税制面で配慮がなされているのです。

ただ、この特例制度を適用できるのは、相続税の申告前に農地を相続して実際に農業経営を始めているケースなど、一定の条件に該当する場合です。遺産分割協議が相続税の申告期限前に終わっておらず誰が農地を承継するのか決まっていなければ、この「農地等の納税猶予の特例」は適用できません。

そして、先ほどの「配偶者の税額軽減の特例」や「小規模宅地等の特例」と異なるのは、申告期限後には制度が適用されない点です。「農地等の納税猶予の特例」ではこの後紹介する対処法は使えないため、相続税の申告期限前に遺産分割協議を終えておく必要があります。

なお、どうしても遺産分割協議が相続税の申告期限前に終わらない場合は、農地のみ先に分割を行うことも選択肢の一つです。遺産の一部分割が認められないケースもありますが、農地だけ先に遺産分割をすることで特例が適用される場合があります。

「非上場株式等の納税猶予の特例」が適用できない

「非上場株式等の納税猶予の特例」とは、事業経営者が亡くなって後継者である相続人が非上場株式等を相続して会社経営を引き継ぐ場合に、一定の条件を満たす株式にかかる相続税の納税が全部または一部猶予される制度です。

事業経営を引き継ぐ人が高額な相続税の支払いに困ったり、相続税が原因で事業の継続を断念したりすることがないように税制上の配慮がなされています。

ただ、上述の「農地等の納税猶予の特例」と同じですが、事業や株式を承継する人が決まっていなければこの特例は適用されません。申告期限後に特例制度を適用できない点も「農地等の納税猶予の特例」と同じなので、相続税の申告期限前に遺産分割協議を終えておくことが大切です。

「物納」を選択できない

相続税の納税は、10ヶ月以内に「金銭」で行うことが原則です。ただ、一定の条件を満たす場合には分割で納付する「延納」を選択でき、延納によっても金銭による納付が困難な場合には、相続財産をそのまま納める「物納」が認められています。

ただし、「物納」とはあくまで相続した財産を納付する制度であるため、具体的に相続する財産が決まっていなければ基本的に使うことができません。そのため、遺産分割協議が相続税の申告期限前に終わっていないと、「物納」は原則として認められないことになります。

遺産分割協議が相続税申告期限前に終わらない場合の対処法

これまで紹介した特例のうち、「配偶者の税額軽減の特例」と「小規模宅地等の特例」については、申告期限後に適用を受けることができます。遺産分割協議が相続税の申告期限前に終わらない場合でも、必要な手続きをしておけば事後的に特例の適用が可能です。

使える軽減制度はしっかり適用して相続税を抑えることは非常に大切なので、手続きの方法を確認しておきましょう。

相続税の申告義務がある場合は期限内に必ず申告する

遺産の総額が基礎控除額を超える場合のように、相続税の申告義務が生じるケースでは申告期限内に必ず申告を行います。遺産分割協議が終わっていないことを理由に10ヶ月の申告期限が延びることはなく、期限内に申告しなければ延滞税などの罰金を課されてしまいます。

ただ、遺産分割協議が完了していないケースでは、そもそも相続する財産が決まっておらず、相続税を計算することができません。そのため、こういった場合は法定相続分で各相続人が遺産を相続したものとして、仮の税額を計算して納税します。

なお、誰が相続人なのかによって法定相続分は異なりますが、相続人が配偶者・子の場合は1/2ずつ、配偶者・親の場合は2/3と1/3、配偶者・兄弟姉妹の場合は3/4と1/4です。

申告期限後3年以内の分割見込書を提出する

法定相続分に基づいて税額を計算して相続税の申告書を提出する際、「申告期限後3年以内の分割見込書」を一緒に提出します。この見込書を申告時に提出しておけば、期限後に遺産分割協議が成立した際に「配偶者の税額軽減の特例」や「小規模宅地等の特例」を適用できます。

なお、見込書では「分割されていない理由」や「分割の見込みの詳細」を記入したり、「適用を受けようとする特例等」を選択したりしますが、実際の書類の作成は税理士に依頼することが一般的です。

遺産分割が完了したら更正の請求または修正申告を行う

3年以内に遺産分割が完了したら、実際に相続した遺産額に基づいて税額を計算し直します。法定相続分に基づいて計算した税額で当初納税していた場合、計算し直して過大に納めていた分があれば払い戻しを受けることができ、そのための手続きが「更正の請求」です。

また、逆に当初納めた税額では不足していた場合は、追加で納税をしなければなりません。その場合は、相続税の申告内容を訂正する「修正申告」を行います。

申告期限後3年以内に分割が終わらない場合は再延長する

「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出していた場合でも、3年以内に遺産分割が終わらないこともあります。その場合には、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出すれば、再延長が可能です。

なお、「やむを得ない事由」とは、例えば裁判が続いているようなケースで、こういった場合には3年よりもさらに期間を延長できるようになっています。

まとめ

遺産分割協議に期限はありませんが、相続税の申告期限前に終わっていないと、相続税のさまざまな特例が使えなくなります。軽減制度が適用できずに相続税が高額になったり、納税が猶予されず納税資金の準備が急遽必要になったりしては大変です。

遺産分割協議が相続税の申告期限までに終わりそうにない場合でも、相続に強い弁護士に相談することで問題を解決でき、相続税の申告期限に間に合うことがあります。遺産分割でお困りの方はオーセンスにぜひご相談ください。

このコラムの監修者

  • 竹中恵 弁護士
  • 弁護士法人 法律事務所オーセンス

    竹中 恵 弁護士(千葉県弁護士会所属)

    奈良県出身。相続や離婚などの親族間紛争を中心とした個人法務を得意とする。トラブルに巻き込まれて不安な気持ちを抱える依頼者の話をじっくりと聞き、目先だけではなく依頼者にとって最善の解決を目指す。今後は、今までの経験を生かして、相続トラブルの防止を目的に、親族がいない方や疎遠となっている方々のサポートにも取り組みたいと考えている。

    著書:
    2019年11月 「生前対策まるわかりBOOK」(青月社)
    2015年03月 「弁護士が教える相続トラブルが起きない法則」(中央経済社)
    2014年03月 「世間を騒がせた相続トラブルの真相」法律監修(幻冬舎)
    2014年01月 「相続バトルを回避する遺言書のつくり方」(幻冬舎)

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