コラム

公開 2020.10.21 更新 2024.02.26

遺産分割協議で不動産を相続する際の手順は?4種類の方法と注意点

相続_アイキャッチ_43

遺産分割協議の対象となる相続財産に不動産が含まれる場合、現金のように簡単には分割できないため、どのように分割するのが良いのか相続人の間で意見が折り合わず遺産分割協議が難航することがあります。遺産に不動産が含まれるケースでは、さまざまな知識が必要になりますが、遺産分割の方法や相続登記などの手続きについて理解しておくことが大切です。

この記事では、遺産に不動産が含まれる場合の相続の手続きの流れや4つの異なる遺産分割方法の特徴、遺産分割協議書を作成する際の注意点など、不動産相続で必要な知識を紹介していきます。

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。

遺産分割協議によって不動産を相続するまでの流れ

まずは、相続が起きてから遺産分割協議を経て不動産を相続するまでの流れを紹介します。それぞれの手続きの概要を確認して、もしも自分で手続きを進めるのが難しそうな場合には弁護士などの相続の専門家に早めに相談するようにしましょう。

相続人調査

相続が起きたら、最初に誰が相続人なのかを確認する必要があります。遺産分割協議ではすべての相続人が参加しないと協議が無効になってしまうため、最初の相続人調査の段階で相続人に該当する人を漏れなく把握しなければなりません。

そのため、被相続人の本籍地で戸籍を取得し、死亡時の戸籍から遡る形で出生時の戸籍まですべての戸籍を揃える必要があります。多くの自治体から戸籍を取り寄せなければならないケースもあるため、自分で市区町村役場に行ったり郵送で発行申請したりする手間をかけたくない場合には、弁護士などの専門家に依頼して戸籍収集を任せた方が良い場合もあります。
また、戸籍上は相続人に当たる場合でも、相続放棄をしている場合もありますので、誰が相続人なのかの確認については、一度弁護士にご相談されると良いでしょう。

相続財産調査

相続が起きたときには、遺産分割協議の対象となる相続財産が何なのか、その範囲を確定させなければなりません。そのために行うのが相続財産調査です。現金や不動産などのプラスの遺産はもちろん、借金などのマイナスの遺産がないかの確認も必要です。

故人の部屋で遺品整理を行って残されている財産を確認するとともに、預金通帳やキャッシュカードを確認してどこの金融機関に口座があるのかを把握して残高を確認します。
固定資産税の納税通知書などが見つかって不動産を所有していることがわかった場合には自治体に照会を行い、金銭消費貸借契約書が見つかって借金があることが判明した場合には未返済額を確認するため借入先に照会を行います。

遺言書の有無の確認

遺言書が残されている場合、相続人全員が遺言書とは別の内容で遺産分割の合意をしない限り、遺言書の内容に従って財産を相続します。一方で、遺言書が残されておらず相続人が複数人いる場合は、遺産分割協議を行って遺産の分け方を話し合うことになります。

遺言書の有無によって相続開始後の手続きの流れが変わるため、相続が起きたら遺言書の有無についてもすぐに確認しなければなりません。自宅や法務局に自筆証書遺言書が保管されていないか確認し、公証役場に公正証書遺言書が残されていないかも確認してください。

遺産分割協議

遺言書が残されておらず相続人が2人以上いる場合、遺産の分け方を話し合って決める必要があるため遺産分割協議を行います。遺産分割協議には相続人調査で判明した相続人すべてが参加する必要があり、1人でも欠けた状態で行った遺産分割協議は無効です。

遺産分割協議の形式に特に決まりはなく、相続人が直接集まって協議する形でもメールや電話で連絡を取り合って協議する形でも構いません。また、遺産分割協議そのものに期限はないため、仮にいつまでも話し合いがまとまらず合意できなくても罰則などはありません。

ただし、相続税の申告期限である10ヶ月までに遺産分割協議が終わっていない場合、いったん法定相続分に応じた相続税申告を行い、あわせて分割見込書を提出するなど適切な手続きをとらないと不利益を被ることがある点には注意が必要です。

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。


遺産分割協議書の作成

遺産の分け方について遺産分割協議で合意できたら、遺産分割協議書を作成して合意した内容を記載します。遺産分割協議書を作成する法的な義務はありませんが、不動産の相続登記など相続関連の手続きで必要なので作成することが一般的です。

遺産分割協議書の作成方法は、手書きでもパソコンで入力して作成する形でも構いません。パソコンで作成する場合でも、署名部分は各相続人が自署して押印は実印で行います。

遺産分割協議に参加した人数分の遺産分割協議書を作成して、各相続人が1通ずつ保管するようにしましょう。

遺産分割協議で不動産を分ける方法は4種類

遺産分割の方法には「現物分割」「代償分割」「換価分割」「共有分割」の4種類の方法があり、どの方法を選択すべきかについては、相続が起きたときの状況によって異なります。遺産分割協議では不動産の分割方法をめぐって揉めることも少なくありませんが、最も良い遺産分割方法を選択して後悔のない相続を実現するためにも、4つの遺産分割方法それぞれの特徴やメリット・デメリットを理解しておくことが大切です。

現物分割

遺産をそのままの形で分割して相続するのが「現物分割」で、4つの遺産分割方法の中で最も基本となる遺産分割の方法です。現物分割は現預金など分割しやすい財産で選択されることが多い方法ですが、土地を分筆して相続人で分けて相続するケースのように不動産でも使える場合があります。

ただし、遺産に含まれる土地の面積が小さい場合には、分筆してしまうと利用価値が下がることも多く現物分割は適しません。また、自宅やアパートなどの建物はそもそも分割が不可能なので、現物分割ではなく他の遺産分割方法によって分けることになります。

代償分割

ある遺産を特定の相続人が相続して、その代わりに代償として現金などの財産を他の相続人に渡す方法が「代償分割」です。

例えば、相続財産である土地2,000万円と現金1,000万円を相続人2人で相続するケースで、相続人の1人が土地2,000万円を相続してもう1人が現金1,000万円を相続し、土地を相続した人がもう1人の相続人に対して現金500万円を渡すケースが代償分割にあたります。結果的にどちらの相続人も1,500万円の財産を得たことになり公平性を保てる点が代償分割のメリットです。

代償分割を行えば換価分割のように不動産を手放さずに済み、土地や建物をそのままの形で相続人が相続できます。ただし、代償として渡せる現金などの資産があることが前提なので、そのような資産を相続人自身が持っていなければ代償分割は選択できません。

また、代償としていくらの資産を渡すのかで揉める可能性がある点にも注意が必要です。不動産の評価方法や評価額をめぐって意見がまとまらず、相続人の間で合意できなくて代償分割を行えないことも考えられます。

換価分割

遺産を売却して現金化して、その現金を相続人の間で分ける方法が「換価分割」です。土地や建物などの不動産のままだと分割が難しくても、売却して現金化すれば相続人の間で平等に分けられます。

ただし、換価分割を選択すると遺産を売却することになり、そのままの形で残せない点がデメリットです。先祖代々の大切な土地を相続したい場合などは、換価分割以外の方法を考えなければなりません。

また、換価を行う上では買い手がいることが前提になります。そもそも買い手が見つからないような不動産では換価分割はできません。立地の悪い場所にある土地などは買い手が見つからず、換価分割を行えない可能性があります。

共有分割

遺産を複数の相続人の共有名義にして相続する方法が「共有分割」です。例えば、遺産に土地が含まれるケースでは、共有分割を行って土地を相続人全員の共有名義にして相続することができます。

ただし、不動産を共有状態にしてしまうと、売却や増改築など共有物に変更を加える場合は共有名義者全員の同意が必要になってしまいます。また、共有状態でさらに共有者に相続が発生した場合、法律関係が複雑になってしまいます。不動産の有効活用の妨げになることも多いため、土地や建物を共有名義にする共有分割は基本的におすすめできません。

遺産分割協議書を作成するときの注意点

遺産分割協議書は、相続人の間で合意した内容を証明する大切な書類です。遺産分割協議書を作成する際には注意すべき点があるので、事後的なトラブルが起きないようにするためにも、記載する文言や表現などには十分に注意する必要があります。

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。


不動産の情報は正確に記載する

遺産分割協議書には、被相続人や相続人、相続財産に関する情報を正確に記載します。不明確な記載にすると、後々トラブルになる可能性があるため注意が必要です。例えば、「土地は相続人Aが相続する」などと遺産分割協議書に書くと、どこにある土地なのかわからず、遺産分割協議の内容を証明しているとは言えません。

そこで、遺産分割協議の対象財産に土地や建物がある場合には、登記事項証明書を取り寄せて、所在地や面積などの詳細な情報を記載し、どこの土地や建物を指しているのか明確にわかるように記載します。

なお、不動産に関する記載以外の部分も含めて、事後的なトラブルが起きない適切な内容の遺産分割協議書を作成するためには、専門的な知識がどうしても必要です。遺産分割協議書の作成方法で迷った場合には、相続に強い弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

署名は自署で、押印は実印で行う

遺産分割協議書をパソコンで作成すれば、途中の修正も簡単にできて手間がかかりません。しかし、署名部分までパソコンで入力してしまうと本当に相続人が同意したのか判別できないため、署名は各相続人が自署する形で行います。

また、不動産の登記や相続税の申告の手続きで遺産分割協議書を法務局や税務署に提出する際、実印で押印されていないと基本的に受け付けてくれません。そのため、各相続人が押印する際には、認印ではなく実印で押印します。

遺産分割協議を終えたら不動産の登記を行う

遺産分割協議を終えて誰が不動産を相続するのか決まったら、不動産を相続する人は法務局で相続登記の手続きを行います。

なお、ここでは相続登記で必要になる書類や費用、申請先や申請方法を紹介しますが、相続に慣れていない方が自分で手続きするとミスをする可能性があります。登記の専門家である司法書士に依頼することも検討してみてください。

必要書類

相続登記をするには登記申請書を作成して提出する必要があります。申請書の用紙は法務局ホームページからダウンロードするか、法務局の窓口に行って受け取ります。

そして、遺産分割協議によって不動産を相続する場合には、被相続人の出生から死亡まですべての戸籍や住民票の除票、相続人全員の戸籍や不動産を相続する人の住民票、遺産分割協議書、固定資産評価証明書が相続登記の手続きの際に必要です。

なお、相続登記の手続きで必要になる書類は、遺言にしたがって相続する場合や、法定相続分にしたがって相続する場合などケースごとに異なります。相続登記の手続きでどのような書類が必要になるのかは、法務局に事前に確認するようにして下さい。

費用

戸籍や住民票、固定資産評価証明書などの発行申請をする際には、それぞれ発行手数料がかかります。相続によって不動産を取得した場合には原則として不動産取得税はかかりませんが、登記手続きの際に登録免許税がかかります。

登録免許税の税額は原則として不動産の価格(課税標準)に税率0.4%を掛けた金額なので、税額に相当する収入印紙を購入して法務局で納付します。
また、相続によって不動産を取得する場合、相続税がかかることもあります。

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。


申請先

相続登記の手続きを行う場所は「相続する不動産の所在地を管轄する法務局」です。相続人の住所地の法務局ではありません。

そのため、例えば遠方に住んでいる相続人が実家の土地や家を相続する場合、実家の所在地を管轄する法務局で手続きをするために、仕事を休んで平日に法務局に行くか、郵送等で法申請する必要があります。こういった手間をかけないためにも、相続登記は司法書士に依頼したほうが良いでしょう。

申請方法

相続登記の手続きに必要な書類が揃ったら、法務局に提出します。申請方法には「窓口で提出する方法」「郵送で提出する方法」「オンライン申請」の3つの方法があります。一般の方がオンライン申請で相続登記をするのは難しいため、書類を法務局に直接持参して提出するか、書類を郵送して提出することが一般的です。

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。


まとめ

遺産分割協議を行って不動産の分け方を決める際には、「現物分割」「代償分割」「換価分割」「共有分割」の異なる遺産分割方法の中から最適な方法を選ぶことが大切です。

ただし、遺産に不動産が含まれるケースでは遺産分割の方法をめぐって相続人同士で揉めてしまい、遺産分割協議が合意できずに困ることも少なくありません。相続に強い弁護士が間に入れば遺産分割協議がスムーズに進みますので、相続でお困りの方はAuthense法律事務所にぜひご相談ください。

Authense法律事務所が選ばれる理由

Authense法律事務所には、遺産相続について豊富な経験と実績を有する弁護士が数多く在籍しております。
これまでに蓄積した専門的知見を活用しながら、交渉のプロである弁護士が、ご相談者様の代理人として相手との交渉を進めます。
また、遺言書作成をはじめとする生前対策についても、ご自身の財産を遺すうえでどのような点に注意すればよいのか、様々な視点から検討したうえでアドバイスさせていただきます。

遺産に関する問題を弁護士にご依頼いただくことには、さまざまなメリットがあります。
相続に関する知識がないまま遺産分割の話し合いに臨むと、納得のできない結果を招いてしまう可能性がありますが、弁護士に依頼することで自身の権利を正当に主張できれば、公平な遺産分割に繋がります。
亡くなった被相続人の財産を調査したり、戸籍をたどって全ての相続人を調査するには大変な手間がかかりますが、煩雑な手続きを弁護士に任せることで、負担を大きく軽減できます。
また、自身の財産を誰にどのように遺したいかが決まっているのであれば、適切な内容の遺言書を作成しておくなどにより、将来の相続トラブルを予防できる可能性が高まります。

私たちは、複雑な遺産相続の問題をご相談者様にわかりやすくご説明し、ベストな解決を目指すパートナーとして供に歩んでまいります。
どうぞお気軽にご相談ください。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
上智大学法学部国際関係法学科卒業、慶應義塾大学大学院法務研究科修了。企業法務や顧問業務、個人法務など幅広い分野に対応。個人法務では、離婚、相続、労働事件などを取り扱う。
<メディア関係者の方>取材等に関するお問合せはこちら

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。

こんな記事も読まれています

コンテンツ

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。