コラム

公開 2020.11.25 更新 2024.03.31

遺産分割後、新たな財産が発覚!誰のものになる?

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遺産分割後に発見された新たな財産は、誰のものになるのか解説しています。基本的には遺産分割協議を一からやり直す必要はなく、発見された新しい財産の分割方法を決定するだけで足ります。ただし新たな財産の存在が重大な場合など、遺産分割協議を一からやり直さなければならないケースもあるため注意が必要です。

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1.遺産分割後、新たな財産が見つかった場合の原則的な対応

被相続人が生前に有していた財産は、「遺産」として相続人に相続されます。
しかし、相続人も、被相続人が生前にどのような財産を有していたのか正確に把握していないことが少なくありません。
そのため、相続人同士で遺産の分割方法について話し合いを行ってしばらくしてから、新たな遺産が発覚してトラブルになるケースがしばしば見受けられます。

よくあるのが以下のようなケースです。

  • 銀行や証券会社からハガキがきて、新たな預金口座や証券口座が見つかった
  • 遺品整理中に、自宅内で現金を発見した
  • ある不動産について、登記上は他人所有となっていたが、実は被相続人所有であることが判明した

このようなことにならないよう、あらかじめ相続調査はしっかりとやっておくことが大切です。
では、もし仮にこのようなことが起きてしまった場合には、遺産分割方法を一から決め直さないといけないのでしょうか?

実は基本的には、遺産分割を一からやり直す必要はありません。
新たな財産が見つかった場合には、「新たな財産の分割方法」を決めるだけで大丈夫です。

たとえば新たな預金口座が見つかった場合には、その預金を誰がいくら相続するか決めればよいのです。
1人の相続人が全部取得しても良いですし、法定相続分どおりに分割しても問題ありません。

遺産分割協議の際、新たな財産の分け方を決めておく

「新たな財産の分割方法」を決めるだけでいいとは言っても、新たな財産が発見されるたびに、その都度相続人全員で分割方法を決めるのは手間がかかりますし、だれが取得するかで再び揉めてしまう可能性もあります。
そういったリスクを避けるため、1度目の遺産分割協議を行った際に「新たな財産が発見されたときの対処方法」をあらかじめ定めておきましょう。

「新たな財産が発見されたときに誰がどれだけの財産を受け取るか」をあらかじめ定めておけば、揉めることなくスムーズに分割することができます。

規定の仕方としては、たとえば以下のような方法が考えられます。

  • 新たな財産が発見されたときには妻が全部受け取る
  • 新たな財産が発見された場合、法定相続人が法定相続分に応じて取得する
  • 新たな財産が不動産の場合、売却代金を等分する

遺産分割協議を成立させるときには、その後新たな財産が発見されたときの対応も合わせて決めておくのがよいでしょう。

2.遺産分割のやり直しが必要なケース

遺産分割協議後に新たな遺産が発見されたとき、例外的に「遺産分割全体のやり直し」が必要になるケースもあります。

2-1.相続人が財産を隠していた

ある相続人が「自分のものにしてやろう」と考えて遺産を隠していたことが遺産分割協議後に判明した場合、他の相続人は「錯誤」や「詐欺」を主張して遺産分割協議の取り消しを主張することができます。
遺産分割協議が取り消されると、相続人らは一から遺産分割協議をやり直さなければならなくなります。

2-2.新たな財産が非常に重要で、過去の遺産分割の意味がなくなった

非常に重要な財産が新たに見つかった場合には、過去の遺産分割協議を無効と解さないと相続人にとって不公平な結果となるケースがあります。
たとえば当初の段階ではほとんど財産がなかったので、一部の相続人が「この程度しか遺産がないのであれば遺産は要らない」と言って他の相続人に相続分を全て譲ったとしましょう。
しかしその後に非常に評価額の高い財産が見つかったとしたらどうでしょうか?

相続分を譲った相続人としては、それなら相続分を譲ったりしなかったと考えるでしょう。
このような場合にも、相続分を譲った相続人は「錯誤」を理由として、遺産分割協議を取り消し、再度遺産分割協議をやり直すよう主張することができます。

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3.遺産分割をやり直した場合の効果

遺産分割協議を取り消した場合には、“一から”遺産分割協議をやり直せると説明しましたが、“一から”やり直せないケースもあります。

たとえば遺産分割協議の後、相続人が取得した株式や不動産などの財産が既に第三者へ譲渡されてしまっているケースもあるかと思います。
そのような場合に、遺産分割協議が取り消されたからといって、譲り受けた財産は全て返さなければならないのだとしたら、第三者の利益が大きく害されてしまいます。

そこで法律は、たとえ錯誤があった場合や詐欺が行われた場合であっても、「善意無過失」の第三者については譲り受けた財産を返還しなくて良い旨規定しています(民法95条4項、民法96条3項)。
第三者が「遺産分割協議には問題がある」と知っていたり、知りうる立場にあったにもかかわらず過失により知らなかったなどの事情がない限り、基本的には第三者から財産を取り戻すことはできないと考えましょう。

このように、いったん遺産分割協議が成立してしまったら、取り消して再協議できるとしても「すべて元通り始めからやり直せる」わけではないないので、注意してください。

4.遺産分割後、新たな負債が出てきたらどうすれば良い?

これまで新たな「財産」が見つかったケースについて説明してきましたが、遺産分割協議を行った後、新たな「負債」が発見されるケースもあります。
たとえば遺産分割協議後に債権者から督促が来て、クレジットカードの残債や消費者金融からの借入が発覚するケースもあります。それでは負債が発覚した場合には、誰にどのように分配されるのでしょうか?

実は「負債」は「財産」と違って、相続人が自分たちで自由に負担割合を決められるものではありません。
そのため基本的には「法定相続人に対し、法定相続割合に従って分割相続」されます。
相続人間で、「一部の相続人が債務を全て負担する」との合意をすること自体はできますが、債権者はその合意に拘束されないため、それぞれの相続人に対して、法定相続割合に従って支払を求めることができてしまうのです。

負債を負担したくない場合

発覚した負債の額が大きく、負債を負担したくない場合には、相続人は家庭裁判所で「相続放棄」をしなければなりません(相続した財産以上の債務については負担しない「限定承認」という手続もあります)。
遺産分割協議で「私は借金を相続しません」と取り決めても債権者に対しては意味がないので注意しましょう。

ただし、相続放棄や限定承認には「期限」があります。
基本的に「相続開始を知ってから3ヶ月以内」に家庭裁判所で「相続放棄(限定承認)の申述」をしなければなりません。期限を過ぎると単純承認が成立し、負債全部を相続しなければならなくなるので早めに対応しましょう。

さらに、遺産の一部を勝手に処分したり、消費したりすると、期限の経過前でも単純承認が成立してしまいます。
そのため期限内であっても遺産分割協議において取得した不動産や預金の名義変更や出金などを終えてしまっていたら相続放棄ができない可能性があります。

いずれにせよ遺産分割協議後に負債が発覚して困ったとき、自己判断で動くとリスクが高くなります。
また、期限経過後であっても例外的に相続放棄が認められる場合もありますので、お早めに弁護士にご相談ください。

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まとめ

遺産分割協議後、新たな財産が発見されるといったトラブルを避けるためには、相続財産調査を入念に行っておくべきです。
また遺産分割協議を成立させるときに「新たな遺産が発見されたときの対処方法」を定めておくと、万が一新たな財産が発見された場合にもスムーズに解決することができます。
「遺産分割協議書の作成方法がわからない」、「遺産分割協議を行っているけれど合意できない」、「新たな財産が発見されてトラブルになってしまった」といったことでお困りの場合は、お気軽に弁護士までご相談ください。

Authense法律事務所が選ばれる理由

Authense法律事務所には、遺産相続について豊富な経験と実績を有する弁護士が数多く在籍しております。
これまでに蓄積した専門的知見を活用しながら、交渉のプロである弁護士が、ご相談者様の代理人として相手との交渉を進めます。
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遺産に関する問題を弁護士にご依頼いただくことには、さまざまなメリットがあります。
相続に関する知識がないまま遺産分割の話し合いに臨むと、納得のできない結果を招いてしまう可能性がありますが、弁護士に依頼することで自身の権利を正当に主張できれば、公平な遺産分割に繋がります。
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記事を監修した弁護士
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弁護士 
(第二東京弁護士会)
大阪大学法学部法学科卒業、神戸大学大学院法学研究科実務法律専攻修了。企業法務としては、債権回収、労働問題(使用者側)、倒産を中心に、個人法務としては、相続、過払金返還、個人破産、発信者情報開示などの解決実績を持つ。
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