コラム

公開 2021.04.21 更新 2024.03.20

相続税対策として株式を生前贈与!手続と注意点について詳しく解説

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株式も相続すれば課税対象となります。今回は、株式を生前贈与することで相続税を節税する際の手続や注意点などを紹介します。相続税を回避してできるだけ多くの財産を遺してあげられるよう、上手に生前贈与を活用しましょう。

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株式も遺産に含まれる!

被相続人が亡くなられた場合、現預金や不動産は勿論のこと、被相続人が生前に有した株式も相続の対象である「遺産」となり、相続人に承継されることになります。
当然、相続税の課税対象にもなります。

もっとも、「遺産」の総額が「基礎控除額」を超えない限りは相続税を課されることはありません。
しかし、「基礎控除額」は、平成27年(2015年)の税制改革により、大幅に縮小されてしまいました。
具体的には、【5,000万円+1,000万円×(法定相続人の数)】だった基礎控除額が、【3,000万円+600万円×(法定相続人の数)】まで引き下げられました。

そのため、税制改正前であれば相続税のことは考えずに済んだ方も、しっかりと節税対策を練っておかないと、相続人らに多額の相続税が課されてしまう・・・なんてことになりかねません。
そこで、今回は株式の相続税対策について解説いたします。

株式の生前贈与は相続税対策として有効?

株式の生前贈与は相続税対策として有効?

生前贈与による相続税対策とは

現預金の相続税対策として有名なのは、生前に少しずつ贈与してしまうことでしょう。
現預金の生前贈与が相続税対策になる理由について簡単に触れておきましょう。

一般に、相続税よりも贈与税の方が税率が高く設定されています。
そうすると贈与した方が損なのでは?と思われるかもしれません。
しかし、贈与については、受贈者(贈与を受ける人のことです。)1人当たりにつき年間110万円までは非課税とされているため、非課税枠内で毎年贈与すれば、課税を回避することができるのです。

実はこの手法は株式の相続税対策としても利用できます。
株式は、不動産などと違い、株式数で分割して贈与しやすいため、非課税枠内で生前贈与を行う対象として適している資産なのです。

さらに、株式には配当があるため、早いうちに生前贈与を行うことで、贈与後の配当も受贈者に受け取らせることができるというメリットがあります。
この点からも株式は生前贈与によって相続税対策を行うことに適した資産と言えるでしょう。

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生前贈与をしても相続税がかかってしまうことも・・・

先ほど説明したとおり、贈与額が年間110万円以下であれば基本的に贈与税は課税されません。
ただし、被相続人の亡くなる前3年以内の贈与は、年間110万円以下であっても相続税の課税対象となってしまいます。

したがって、死期が迫っていると感じてから年間110万円以内の贈与を実行したとしても、相続税対策としての効果は低いと言えます。
相続税対策としては、お元気なうちから年間110万円以下の範囲内で贈与を行っておいたほうがよいです。
また、毎年同じ時期に同じ内容の贈与を行っていると、それら全体が1つの贈与と評価されて課税対象となるリスクがあります。
そう評価されないためには、贈与の時期や贈与する株式数を変えるなどして工夫する必要があります。時期や株式数が毎年違っていることの証拠として、贈与契約書を作成しておくのもおすすめです。

株式の生前贈与に必要な手続と株式の評価方法

株式の生前贈与に必要な手続と株式の評価方法

さて、株式も現預金と同様に、毎年110万円以内で生前贈与をすれば相続税対策になると説明しましたが、そもそも株式の贈与はどのようにして行うのでしょうか?
また、株式が110万円以内かどうかはどのように判断すればよいのでしょうか?
以下ではそういった疑問についてお答えします。

まず、一口に株式といっても、株式には大まかに分けて次の3種類があります。

  • 株式市場に上場されている「上場株式」
  • 上場されていないが自由に譲渡できる「譲渡制限のない株式」
  • 上場されておらず譲渡にも会社の承認が必要となる「譲渡制限のある株式(非公開株式など)」

それぞれについて、贈与の手続や評価方法が異なるので分けて見ていきましょう。

上場株式の場合

上場株式の場合、ほとんどの方は証券会社を通じて株式を保有していることが多いと思います。
このような場合、上場株式を贈与する方法については、各証券会社の定める方式に従うことになります。

概ねの流れとしては、最初に証券会社に贈与を行いたい旨を相談して所定の書式などをもらい、受贈者側で当該証券会社(あるいは別の証券会社)で口座開設を行い、所定の書式をすべて提出して証券会社の承認を得て贈与を実行するという流れです。
また、株式の評価額は、次の4つうち最も低い価格をもとに決定します。

  1. 贈与日の最終価格
  2. 贈与月の毎日の最終価格の平均額
  3. 贈与月の前月の毎日の最終価格の平均額
  4. 贈与月の前々月の毎日の最終価格の平均額

上記4つのうち最も低い価格が110万円以下であれば贈与しても課税されることはありません。

譲渡制限のない株式の場合

株式市場に上場されていない株式で、譲渡制限のないものは、当事者間の合意で譲渡できます。
ただし、株式を譲渡(贈与)したことを当該会社に通知し、株主名簿の記載を変更してもらう必要はあります。

ところで、上場株式とは違い、上場されていない株式には市場価格というものがありません。それでは、どうやって株式の価値を決めるのでしょうか。

詳細に説明すると長くなってしまうので、かいつまんで説明すると、その会社の経営支配力を持っている同族株主などが株式を取得した場合であれば、会社の規模に応じて、事業内容が類似する上場会社の株価を基礎に計算したり、贈与日時点での会社の純資産額を基礎に計算したりします。

他方、同族株主以外の株主が株式を取得した場合については、年間配当額を用いて算定します。

以上ざっくりと説明しましたが、はっきり言って上場されていない株式の評価は難しいため、上場されていない株式を贈与する場合は、弁護士や税理士などの専門家に相談の上、実行した方がよいでしょう。

譲渡制限のある非公開株式の場合

株式の中には、会社の定款で譲渡するには会社の承認を必要とする譲渡制限が設けられている場合があります。
このような株式の場合、贈与を実行するためには会社の承認を得る必要があります。
そこで、贈与する側あるいは贈与を受ける側のいずれかから会社に対して、譲渡する株式の数、贈与を受ける者の氏名などを明らかにして譲渡承認の請求を行う必要があります。

会社が譲渡を承認した場合か、あるいは、譲渡承認請求から2週間以内に会社が何ら回答しない場合には、贈与は有効に実行されたことになります。

贈与税の非課税内(110万円)かどうかの判断は、上記の「上場されていない譲渡制限のない株式」の場合と同様です。

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株式を生前贈与する際の注意点

これまで株式の生前贈与が相続税の対策として有効であることや、生前贈与の方法について解説してきました。
ただし、注意していただきたいのは株式を贈与すれば、その権利も同時に失ってしまうことです。
例えば、ご自身が経営されている会社の株式を相続税対策として子らに贈与した場合子らが株主となるため、その後に子らとの関係がこじれてしまうと、株式比率によっては会社の経営権を奪われるということも起こりえます。
こうしたデメリットも踏まえて、生前贈与するか否か慎重に検討することをおすすめいたします。

また、相続人が株式の仕組みに疎く、株式を贈与されても扱いに困るような場合であれば、無理に株式を贈与するのではなく、ご自身で株式を換金したうえで、その現金を贈与してあげた方が、結果的に相続人のためになることも考えられます。

まとめ

たしかに株式の生前贈与は、相続税対策として有効な方法の一つですが、あくまでも対策法の一例にすぎません。
株式の生前贈与や相続税対策でお悩みの際は専門家に相談しながら、個々の具体的事案に応じ、最も適切な相続税対策を実行するようにしましょう。

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記事を監修した弁護士
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(第二東京弁護士会)
大阪大学法学部法学科卒業、神戸大学大学院法学研究科実務法律専攻修了。企業法務としては、債権回収、労働問題(使用者側)、倒産を中心に、個人法務としては、相続、過払金返還、個人破産、発信者情報開示などの解決実績を持つ。
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