コラム

公開 2021.05.26 更新 2024.03.01

相続発生後に行うべき手続きとは?期限別の取るべき対応一覧

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相続が発生した場合、何をすれば良いのかわからないと悩んでいる方は多くいますが、行っておくべきことは、実は法律上はそこまで多くはありません。今回は、相続発生後、どんなことをいつまでにすれば良いのかについて、期限別に分けて解説します。

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亡くなってからの日数別の相続手続き

忘れずに対応したい相続手続きは、亡くなってからの日数に応じて次の通りです。
相続放棄・限定承認や、遺留分侵害額請求については、いつから起算するかという起算点について法律的な解釈論がありますが、概ね下記の期間を目安としてください。

亡くなってからの日数 忘れずに対応したい相続手続き
7日以内 ・死亡届を提出する
3ヶ月以内 ・相続放棄、限定承認するか判断する
4ヶ月以内 ・準確定申告を行う
10ヶ月以内 ・相続税申告を行う
1年以内 ・遺留分に関する意思表示を行う
期限なし ・遺産内容を確認する
・遺産分割する

死亡届を提出する(死後7日以内)

相続の発生とは、人の死により生じます。
人が亡くなった場合、その死亡の事実を知った日から7日以内に役所に届け出なければなりません。
亡くなられる原因は病気や事故などさまざまありますが、亡くなられた場合に遺族が行うべき手続きは同じです。

届出人

死亡の届け出については、戸籍法上、①同居の親族、②その他の同居者、③家主、地主又は家屋もしくは土地の管理人の順で届け出をすべき義務があると定められています。
その他にも、同居の親族以外の親族、後見人なども届け出をすることができます。
一般的には、死亡の確認をした医師(病院)から親族に連絡がいくことが多いため、連絡が来たらすぐに死亡届を出すようにしましょう。

届出場所

死亡届を提出する役所は、以下のいずれかに所在するところです。

  • 亡くなられた方(被相続人)の本籍地
  • 死亡地
  • 届出人の所在地

届出期日

届出義務者が、被相続人の死亡を知った日から7日以内(国外で亡くなられたときは、その死亡を知った日から3ヶ月以内)に届出をしなければなりません。

必要書類

死亡の届け出に必要な書類は、死亡届(病院に備え付けの書式があることが多いです)と、死亡診断書または死体検案書のいずれかです。
死亡診断書は、病院が発行するもので、死亡届と一体となっていることが多いです。
死体検案書は警察が発行する書類です。
あとは、届出人の印鑑が必要になります。

相続放棄、限定承認するか判断する(3ヶ月以内)

相続放棄、限定承認するか判断する(3ヶ月以内)

死亡届を出した後、次に注意すべき期間としては、被相続人が亡くなられてから3ヶ月です。
この3ヶ月というのは、相続放棄ないし限定承認を行うことができる期間です。
相続放棄・限定承認は、遺産のうち資産よりも負債(借金など)のほうが大きい場合に選択すべき手続きです。

まずは相続放棄すべきかどうか遺産内容を調査する

相続放棄・限定承認は、一般的には被相続人の遺産のうち、資産よりも借金などの負債の方が大きい場合に選択する手続きです。
端的に言えば、相続することで損失が大きくなる場合に行うべきということです。
3ヶ月の期間制限があるので、被相続人が亡くなられてから3ヶ月以内に遺産の内容、特に負債がないかということを調査、確認しておいたほうが良いでしょう。

相続放棄、限定承認の手続きを行う

相続放棄と限定承認について簡単に説明しましょう。

相続放棄は、文字通り相続の一切を放棄するということで、被相続人の遺産を受け取る権利を完全に放棄するということです。
これに対して限定承認とは、プラスの相続財産の範囲内でマイナスの財産を相続するというものです。
遺産のうちの負債を他の遺産ですべて返済して、残りがあれば相続できますし、負債が残ってしまった場合でも、その負債を相続せずに済むというメリットがあります。
相続放棄、限定承認の手続きはいずれも家庭裁判所で行う必要があります。

原則は死後3ヶ月以内だが例外もある

相続放棄・限定承認は、「相続の開始を知ったときから3ヶ月以内」に行う必要があります。
ただし、この期間は家庭裁判所に申し出をすれば延長してもらうことができます。
遺産内容の調査に時間がかかりそうな場合には、家庭裁判所で、延長の申請を行っておくべきです。
一般的には延長期間は3ヶ月程度認められます。つまり、相続開始時から6ヶ月程度まで手続き期間を延ばすことができるのです。

加えて、この「相続の開始を知ったとき」という起算点をめぐって、これまでさまざまな法的な紛争が起きており、判例が積み重ねられています。
現在の判例法理では、「3ヶ月」の起算点について、「相続人が相続財産の全部若しくは一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべかりし時から」と解釈されています。

つまり、相続開始時(被相続人死亡時)には何らの財産も確認できず、それから3ヶ月以上経った後に負債の存在が判明した場合などにおいては、その負債の存在が判明したときを起算点として3ヶ月をカウントするとされています。
したがって、この様なケースにおいては3ヶ月経過後に負債が判明した場合でも慌てることはありません。

相続放棄が認められない場合もある

相続放棄と限定承認は、原則として相続開始時から3ヶ月以内に行うことができますが、3ヶ月経過していなくても、相続放棄、限定承認ができなくなる場合があります。
それが、「みなし承認」と呼ばれるものです。

相続人が、遺産の一部を処分したり消費したりしたときには、相続を承認したものとみなされて、相続放棄・限定承認ができなくなります。
したがって、相続放棄・限定承認の可能性がある場合には、遺産を勝手に処分したり、使ってしまったりしないように注意する必要があります。

相続に関する税金の申告を行う(4ヶ月・10ヶ月以内)

相続放棄・限定承認の次に注意するべきなのが、被相続人の税金に関する手続き期限です。
これらは相続放棄、限定承認と違って延長はできません。
超過した場合には延滞税が課されるリスクがあります。

準確定申告:4ヶ月以内に行う

被相続人が生前に毎年確定申告を行っていた場合、死亡後4ヶ月以内に死亡した年の1月1日から死亡時までの収支について確定申告を行わなければなりません。
これを「準確定申告」と呼びます。

一般的に言えば、被相続人が年金だけで生活されていた場合などは、確定申告の必要はありません。
しかし、亡くなる直前まで何らかの事業収入や不労所得などの収入が被相続人にあった場合には、準確定申告を行っておくべきです。

相続税申告:10ヶ月以内に行う

税制上、相続人は、被相続人の死亡時から10ヶ月以内に相続税申告を行う必要があります。
相続税の対象となる遺産が相続税の基礎控除額以下の場合には相続税の申告は不要とされています。

なお、基礎控除額は、「3000万円+600万円×(法定相続人の数)」という計算式で算定されます。
遺産の内容がこの基礎控除額以下であれば、相続税の申告は不要です。

ただし、遺産に不動産がある場合にその評価額をどう算定するかといった問題があるため、基礎控除額以下かどうかの判断を勝手に行ってしまうと、後から申告漏れを指摘されるリスクがあります。
また、相続人間で遺産をどのように分けるか10ヶ月以内に決められず、相続税申告ができないというケースもあります。
こうしたケースでは、実務上は、とりあえず法定相続分に則って相続分を算定して相続税申告を行っておき、遺産分割成立後に修正申告するという方法が取られています。
遺産分割が未了だからと言って相続税申告をせずに放置することはリスクがあります。

遺留分に関する意思表示をする(1年以内)

遺留分に関する意思表示をする(1年以内)

相続税申告の後に気を付けるべき期間としては、遺留分に関する1年という期間が挙げられます。
遺留分とは、被相続人の遺言書の内容や生前の贈与などによって相続人の法定相続分が侵害される場合に、法定相続分に対する最低限の保証として法律上認められている権利です。

この遺留分を法律上保障してもらうためには、1年以内に意思表示しておく必要があります。
1年の起算点は、「相続の開始及び遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知ったとき」と定められています。
一般的には、遺言書の内容を知ったときから1年と考えておきましょう。

まずは遺言書の有無を確認

遺留分の請求は、遺言書などにより法定相続分が侵害される場合に行うことになります。
まずは、被相続人が遺言書を残していないか確認しておきましょう。

公正証書遺言の有無は、公証役場に問い合わせることで確認できます。
その他の方式の遺言書はどこに保管されているかわかりませんので、被相続人の住居や銀行貸金庫などを調査しましょう。

相続分侵害の可能性があるなら遺留分侵害額請求の意思表示を行っておくべき

遺言書や生前の贈与の存在が判明し、それによりご自身の遺留分が侵害されている場合には、遺留分の請求を行うことができます。
これを遺留分侵害額請求と呼びます。

ただ、遺産の全容がわからず、ご自身の遺留分が侵害されているかどうかわからない場合もあります。
遺留分侵害額請求は、とりあえず意思表示さえ行っておけば10年間は保障されるため、遺留分侵害があるかどうか不明な場合でも、「遺留分侵害額請求の意思表示をします」と内容証明郵便で受贈者に対して通知しておいたほうが良いです。

遺産内容を確認する(期限なし)

上記の期間以外には、相続に関して法律上の明確な期間制限はありません。
遺産内容の確認やその遺産を相続人間でどう分割するかについては、いつまでにしなければならないという定めはありません。

ただし、相続放棄や相続税申告などのためには、自ずと遺産内容を確認する必要がありますので、早めに行っておいたほうが良いことは間違いありません。

遺産分割に期限はないが遺産の把握は行っておくべき

先に挙げたように、遺産を相続人間でどう分割するかという遺産分割については、法律上は期間の定めはありません。
ただ、遺産が知らないうちに誰かに費消されてしまったり、失われてしまったりすることがあるため、少なくともどのような遺産があるかは早めに把握しておきましょう。

遺産を保全・確保する

遺産が知らないうちに誰かに使われてしまったり、また、遺産のうちの不動産が第三者に時効取得されてしまったりなど、遺産を放置しておくことはマイナスにしかなりません。
相続開始後、早いうちに遺産の内容を確認し、その保全、確保に努めましょう。

預貯金・有価証券について各金融機関に通知する

遺産のうち、預貯金、有価証券については、これを保管する金融機関が被相続人の死亡を知らなかった場合、被相続人の身近な人が被相続人に成りすまして解約したり、売却したりすることが実行されてしまうリスクがあります。

こうした事態を回避するためには、まずは判明している預貯金、有価証券について、各金融機関に対して、被相続人が亡くなったことを通知しておきましょう。
そうしておくと、金融機関は、相続人全員の同意がない限りは、預貯金の解約に応じず、有価証券の処分にも応じなくなります。

不動産、自動車について所在と権利書の確保

遺産のうちの不動産や自動車などについても、相続人の一人や被相続人の身近な人に勝手に処分されたりしないように、不動産の権利書、自動車本体と車検証などの権利関係を証明するものを確保しておきましょう。

貴金属などの保管状況の確認

被相続人が所有していた貴金属も当然遺産に含まれます。こうした動産類は、勝手に処分されやすいので、早めにその所在、内容、保管状況を確認しましょう。

遺産分割する(期限なし)

遺産分割する(期限なし)

被相続人が亡くなり相続が発生した場合、相続手続きを完了させるには、法定相続人間で遺産をどのように分配するかを決めなければなりません。
これを遺産分割と言います。
簡単に言えば、相続人間で話し合いをするということですが、法律上の期限はありません。
なお、遺言書がある場合には、基本的には遺言書によって相続が進められることになるため、遺産分割は必要ありません。

遺産分割については法律上の期限の定めはない

先に挙げたように、相続人間で遺産をどのように分けるかという遺産分割については法律上の期限はありません。
ただ、遺産分割をせずにいつまでも放置しておくことはデメリットがあります。

遺産分割を早期に行うメリット

遺産分割を実行するメリットとしては、権利関係の明確化というものが挙げられます。
誰が何を相続するかということを明確に定めておくことで、後々のトラブルを回避できるというメリットがあります。

遺産分割しないデメリット

遺産分割を行うメリットの裏返しになりますが、遺産分割をせずに放置しておくと、相続人のうちの誰かが亡くなってしまって、その亡くなられた相続人の相続人が遺産分割に参加せざるを得なくなります。

関係の希薄な人が遺産分割協議に加わることで余計な紛争が生じてしまうというリスクがあります。
また、遺産分割をせずに放置しておくと、遺産が散逸したり費消されてしまったりと、いつのまにかなくなってしまうというデメリットもあります。

まとめ

相続開始後に忘れずに行っておくべき手続きをまとめておきましょう。

  • 死後7日以内:死亡届の提出
  • 死後3ヶ月以内:相続放棄・限定承認の決定
  • 死後4ヶ月以内:準確定申告
  • 死後10ヶ月以内:相続税申告
  • 死後1年以内:遺留分侵害額請求の意思表示

こうした法律上明確な期限については、徒過しないように気を付ける必要があります。
これに対して、遺産分割について期限の定めはありません。
しかし、遺産分割を放置しておくことは相続人の複雑化や遺産の散逸などデメリットが多くありますので、できるだけ早期に行っておいたほうが望ましいと言えるでしょう。

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記事を監修した弁護士
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(第二東京弁護士会)
早稲田大学法学部卒業、早稲田大学大学院法務研究科修了。相続に関する相談会や、労働問題のセミナーなどにも取り組んでいる。
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